皆さん、こんにちは!シャロン・シーです!
前回に引き続き、「消費者行動学で知る顧客の心理」についてお話しします。
今回は、ネスレ社の事例をご紹介します。
※消費者行動学で知る顧客の心理(アップル社編)は下記リンクをクリック
ネスレ社がインスタントコーヒーを世界で初めて売り出した時、人々はその便利さに驚き、あっという間に全米中に広がりました。
しかし、しばらくすると、次第に売れ行きが下がってしまったのです。
そこでネスレ社は理由を探るため、女性をターゲットにしたインタビューを行ないました。
「どうして買うのをやめてしまったのですか?」という質問に、「香りが悪い」「美味しくない」など否定的な回答をする消費者が大半を占めました。
これらのインタビュー結果を見て、ネスレ社は大変驚きました。
なぜなら事前に行った調査で、ほとんどの消費者が、インスタントコーヒーと普通のコーヒーの味の差を見分けることができなかったからです。
それでは、なぜ今回のインタビューでインスタントコーヒーに対して否定的な回答をする人が多かったのでしょうか。
その真相を明らかにするために、深層心理学者メイゾン・ヘアーが次のような調査を行いました。
彼は、主婦を対象にAB2つのグループに分け、「ある女性が、今から見せるリストの商品を買いました。さて、この女性のことをどう思いますか?」という質問を投げかけました。
Åのグループには「ハンバーガー・パン・インスタントコーヒー・ニンジン……」のリスト、Bのグループには「ハンバーガー・パン・ドリップ式コーヒー・ニンジン……」のリスト2つのリストで違うのは、「インスタントコーヒー」か「ドリップ式コーヒ
ー」か、という点だけなのですが、明確に結果が分かれたのです。
Bグループの「ドリップ式コーヒー」が入っているリストを買った女性に対しては、「とてもいい主婦」、「健康に気遣っていて毎日家庭料理をつくっている」、「旦那のことを気遣っている」など比較的肯定的な意見が多く出ました。
しかし、Åグループの「インスタントコーヒー」が入っているリストの女性に対しては、「買い物下手で怠け者」、「将来のこと考えてなさそう」、「悪妻」といった、否定的な意見が目立ちました。
この実験から分かったことは、インスタントコーヒーを買わない理由は、香りや味が悪いということではなく、本当の理由は別にあったということです。
インスタント食品には、どうしても「面倒くさがり」、「きちんとしていない」などの否定的なイメージがあります。
これらの食品を買ってしまうと、単に怠け者とか無駄な買い物をしているという感覚を持ってしまう・・・だから買わない、という結論に至りました。
このことに気づいたネスレ社は、すぐにそのイメージを払拭するようにコンセプトを変えました。
発売当初は、「インスタントだけど香りが良い」という売り方をしていたのですが、「賢い女性は、みんなこれを飲む。時間を節約したい人は、インスタントコーヒーを飲む」というイメージでコピーを作りました。
「母でもあり妻でもあるあなたへ。仕事にも家庭にも、もっと大切な時間を作ってくれる。一歩進んだ大人の女性に……。ネスレ社のインスタントコーヒー」
このように「怠けもの」というマイナスのイメージをプラスに変えることで、会社側の思惑通り、売れ行きは爆発的に伸びました。
このインスタントコーヒーとまったく同じ戦略は、洗濯機などの家電製品に対しても行われてきました。
「手で洗わずに洗濯機などを使うのは、主婦失格」
そんなイメージを払拭することで、やはり商品の売れ行きは格段にアップしたのです。
「怠けてはいけない…」、「がんばって働かなければいけない…」、「勤勉でなければいけない…」、「正直であるべきだ…」など人間の行動、思考は、そんな倫理観によって縛られています。
消費者の視点を変え、イメージを変えることで、その倫理観の呪縛を解くことができ、相手の気持ちを動かすことができるのです。
最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございました。